CD「Waltzes」ドイツ音楽雑誌 klassik.com レヴュー

21. 10月 2018

作曲家Kerim Königと ピアニスト宮田真夕子は、ピアニッシモの世界の豊かな感情によって、聴き手におもしろい体験を与えてくれる。

ベ ルリンの音楽家Kerim Königは、今までにいくつかのクラシックアルバムを公表したことはあったが、現在までは主に映画音楽家として、ドイツの大手テレビ局シリーズ  “Soko Wismar” で名声を得ていた。彼の新しいプロジェクトのパートナーは、同じくベルリンに住む日本人ピアニスト、在学中にショパンの作品に集中して取り 組んでいた宮田真夕子だ。『Waltzes』制作において、その作曲家を追求していたKönig氏にとっては幸運なことだ。このアルバムは Hey!Classicsより出版される。

Kerim Königはベルリンでピアニスト宮田真夕子のコンサートを聴いた際、自身がいつか作曲して、長い間引き出しの中にしまい込んだままだった一つのワルツを 思い出す。この瞬間が、彼がCDのために作曲した9つのワルツの基盤となった。残念ながらこれは、とてもシンプルにつくられたCDカバーから入手できるほ ぼすべての情報である。”Waltz No.1″ から “Waltz No. 9” まで番号のつけられた各々のワルツに、少なくとも短い意見や背景が付け加えていられたら良いのにと思う。唯一Waltz No. 4に ”ショパンを敬して” という題がつけられている。

それはそうと、一番肝心なのは音楽であり、トータル時間は30分ほどであるが、このジャンルを好む者にとっては聴きごたえがあ る。9つのワルツの中で、映画音楽のように聞こえて、この作曲家がどこのジャンルから来る人物かがはっきりと聞こえる瞬間が多々ある。しかしそれは必ずし も悪い ことではない。なぜなら、この作曲家König氏の大きな才能は、雰囲気を音楽的に捉えて響上に表現することにあるからだ。その脇で、このワルツの中に は、多少のジャズ要素や “Waltz No. 5″ のようにラテン要素までも含まれる中、歌曲的メロディーラインや表現豊かなハーモニーによって、ショパンの影響が聴こえる。そ の背景もあり、作曲家König氏は、ショパン弾きである宮田氏を演奏者に選んだのは素晴らしい選択だったと思われる。彼女は音楽の本質に深く迫りこみ、 濃厚で繊細な演奏で表現する。宮田氏はメロディーラインやフレージングに対する大変良い感覚を有することを演奏で立証し、それは始まりのワルツか らはっきりと聴こえる。”Waltz No.3” で彼女は、大きな内面的緊張感を見事に構成し、それとは対照的に6番目のワルツでは調和の取れたテンポの変化で魅了する。彼女のしっかりした指のテ ク ニックと強烈な表現力を用い、宮田氏は、何の伴奏もいらなくなるほど音楽の空間を十分に満たしてくれる。彼女の繊細なニュアンスを持つ強弱、デュナ ミックは、ワルツ全体にとても良く合っている。一ついえるのは、作品の各々に大きな強弱の変化が時々望まれることだ。

このCD 『Waltzes』は、革新的ではないかもしれないが、とてもよい制作だ。そのワルツのしきたりをやぶることをしないためでもあるか、作品は深く、繊細、 情緒的で、全体的にとても聴きやすい。宮田氏の表情豊かな演奏性質により、一つ一つのワルツは独自の物語を語り、聴き手に沢山の連想空間を与えてくれる。

2015年11月7日 Maxi Einenkel